春の日の記憶

「ときめく心も、君へのドキドキも、全部準備できました。」

【読書】八重洲で出会った冒険の物語。/三島由紀夫『夏子の冒険』

 

 

久々に東京駅付近で時間があったので八重洲ブックセンターに立ち寄ってみた。

 

八重洲ブックセンターwww.yaesu-book.co.jp

 

 

初めて行ったんですけど本当に何ここ天国…?って感じでした。荷物が重いのと所用で色々歩いた帰りで足の限界がきて長居できなかったのが残念だったけど、コロナがもうちょっと落ち着いたら軽装備で行こうと決意。

 

 

 

大学生になってから本腰入れて本を読もう!(未遂)を何回もしているので、この時間をね、しっかり利用できるようにしないと。やっぱり本は読まないとね…

 

そう思いながら店内を物色したんですけど、まあ面白そうな本がたくさんある〜〜!選ばなすぎむり〜!と思ったので、新しい本を探すより前から興味のあった人の本を買ってみよう。そう思い切ってチャレンジしたかったこの方の作品を選択。

 

 

 

 

夏子の冒険 (角川文庫)

夏子の冒険 (角川文庫)

 

 

 

まず読み始めて思ったことは、先入観は人の視野を狭くするということ。

三島由紀夫というとどうしても割腹自殺の印象が強くて、思想が強い人なんだろうなとか思っていた。あと、この前原美術館森村泰昌のセルフポートレイト作品見たこともけっこう影響してるかもしれない。あの時は「む、むずかしい…」と思ってしまったから、ちょっと怖いというか、自分の全く知らない海に飛び込みかけたような感覚になってたのかもしれない。まあ、それもいい経験だった。

 

 

Hara Museum Web | 原美術館 | 展覧会 | 森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020―さまよえるニッポンの私

 

 

実際(この一冊だけで判断するかどうかは別として)、今まで三島作品を読まなかった人生をひどく後悔した。

 

たぶんこの『夏子の冒険』は三島作品でもかなり読みやすい作品に分類されるとは思うのだけど、初めて読む作品がこれでよかったかも、と思うこともできた。初めて出会う作品が自分に合うか合わないかってけっこう大事だよね。

 

 

『夏子の冒険』|感想・レビュー - 読書メーター

 

読み終わったあとネットでめちゃくちゃ感想読み漁って知ったのだけど、どうやら弘中アナの愛読書らしい。なんだか納得。ちょっと夏子っぽいなと思う。全然知らないけど。

 

 

 

夏子という人物

もしこの時代に私が生まれていて、近くに夏子がいたらどう思うかなあと想像してみた。だけど、答えが出なかった。

 

現代を生きる私の感覚なら、たぶん夏子いいじゃんイケてるじゃん!と思う。権力や金に魅力を感じるのではなく、ただ情熱があるかないかを追い求めているのに急に「あたくし修道院に入る。」…いや、草。と言いざるを得ない。

 

もし、例えば私がその時代を生きる夏子のクラスメイト的なポジションだとしたら、腹たてているかもしれない。良家のお嬢様できっと家庭に入ることが当たり前とされていた時代に、捉えようによってはワガママに生きる夏子を、「なんなのあいつ」と思いつつ、たぶん裏では羨ましいなと思ってるタイプのモブ。

 

こんなことを考えてしまうくらい夏子は魅力的だった。小説の中の人物だってわかっててもちょっと羨ましいと思えるくらい。

 

 

 

井田さんはいい人だけど

ネタバレになるから最後は言わないけど、井田さんはまあまあいい人だったと思う。だけどこの作品があくまで「夏子と毅」の物語ではなく、「夏子」の物語であるのは、井田さんの情熱の有無が関わっているんだなと思った。

 

 

三島由紀夫の表現の美しさ

いやもうね、読みながら「はぁ~…」と感嘆してしまった。美しい文章に出会うといつもそうなる人間なんだけど、表現の美しさがモロ自分の好きな美しさだった。日本語はやっぱり美しいよね。大事にしたいなと思う。

 

ちなみに作中で一番最初に「はぁ~…」が出たのはこの部分(P41)

(中略)

あとの七人はすでに歌をうたいながら下りてくる学生風の男女である。かれらが道の曲り角からあらわれたとき、その白い運動靴の多くの足は、急坂を駆け下りてくるために、空を跳びはねて来るようにみえた。

 

他にもあったのだけど読んでるときに近くにペンがなくてメモできなかった…。いいと思ったフレーズに線を引くのは習慣にしていきたい。

 

 

 

 

夏子の冒険 (角川文庫)

夏子の冒険 (角川文庫)

 

 

すごく何かを考えさせられた!とかのジャンルではないし気楽に読める作品ではあるのだけど、三島由紀夫の文章表現の美しさと描かれる人物の魅力が衝撃的なくらい素晴らしかったので簡単ではあるけど文字にしました。

同時に『お嬢さん』も買ってみたので読もうと思ってます。あわよくばやっぱり、『金閣寺』に挑戦したいところでもあります。読んだら感想残せるといいな~。